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オートレベルAE-7


オートレベルAE-7の主な仕様。
倍率:30×、対物レンズ有効径:40mm、最短合焦距離:20cm、自動補正範囲:約0.5度(±0.25度)、
1km往復標準偏差:±1.5mm、大きさ:220×136×142mm、重さ:1.7kg なお、画像は水平目盛り付のAE-7C。
※1km往復標準偏差:1km離れた区間を往復して高低差を測定した際の器械誤差。

 ニコンが1993(平成5)年に発売した測量機「オートレベルAE-7」は、土木、建築の現場では欠かせない機器として、発売から20年にわたる
ロングセラーを続けている。 今回は、開発と設計を担当した井村元彦のコメントをまじえて解説する。

レベルとは


オートレベルAE-7の各部名称

 測量機は、地形上の2点の位置関係を測る機器である。高低差を測る(水準測量)機器が「レベル」、水平角、鉛直角を測る(角度測量)
機器が「セオドライト」とよばれる。「セオドライト」は、角度と距離が測定できる「トータルステーション」に発展している。
 レベルは、標尺という物差しの一種を見るための望遠鏡と、望遠鏡を水平に回転させるための台座によって構成される。
図のような地点AからBの高低差を測る場合、レベルを用いた測量方法は以下の通りである。

  1. レベルを地点A、B間に設置する。
  2. 地点Aに立てた標尺の目盛りをレベルで読み取り、値aを得る。これを「後視」という。
  3. 地点Bに立てた標尺にレベルを向けて、標尺の目盛りを読み取り、値bを得る。これを「前視」という。
  4. 値aから値bをマイナスした値が、地点A、Bの高低差となる。

 なお、2点間距離が長い場合の測量は、上記の作業を繰り返して行う。






レベルによる測量


地点A、B間に距離がある場合

オートレベルのしくみ

コンペンセーターの動き
オートレベルAE-7では傾きが最大約0.5度まで補正される。

 レベルで高低差を測るためには、正確に水平を視準する必要がある。
 オートレベルは、望遠鏡内にコンペンセーター(補正装置)を内蔵し、視準線 を自動で水平に保つことができる。図のように、光路上の2つのプリズム間に反射ミラーがあり、4本のワイヤーで「ブランコ」のようにつりさげられている。 ブランコが重力によって振り子のように動くことを利用し、レベル本体が傾いても反射ミラーはそれを打ち消すように傾くことで、視準線を水平に保つことができるようになっている。
 かつて測量に用いられていた「チルチングレベル」はコンペンセーターがないため、レベル本体を正確に水平に設置する必要があった。オートレベルの登場により、この煩雑な作業が省け、作業の効率化につながっている。

  • 視準線:望遠鏡の光軸の延長線が、標尺と重なる点を結んだ線。

戦後の復興を支えた測量機


レベルE、E5


望遠鏡視野

 戦後、空襲により焦土と化した日本の国土に、住宅、工場、道路、鉄道などを復興させる基礎となるものが測量であった。しかも、当時、測量機は輸入品が多く、ニコン(当時:日本光学工業)が測量機を開発、生産することは社会の要請にこたえることであり急務であった。
 このような状況下、1947(昭和22)年、ニコンはチルチングレベルの「レベルE」を発売する。光学系にテレフォトタイプ※1を採用したことで、全長が短く、小型軽量で使い勝手に優れた。さらに、国産初のアナラクティック光学系※2の採用によって、スタジア測量※3を可能とした。
 発売当初、「E」はその斬新さのため、市場から敬遠される傾向があったが、普及が進むにつれて評価が高まった。その後も改良を重ね、1959(昭和34)年に発売された「レベルE5」は、「チルチングレベルの決定版」とよばれ、2004(平成16)年まで45年間の超ロングセラーを続けた。

  • ※1テレフォトタイプ:
    望遠鏡の対物レンズの凸レンズ後方に凹レンズを置いた光学系。望遠鏡の全長を焦点距離よりも短くできる。
  • ※2アナラクティック光学系:
    レベルと標尺までの距離が変化しても、望遠鏡の倍率が変化しない光学系。
  • ※3スタジア測量:
    AE-7の場合、望遠鏡視野内に描かれたスタジア線間で読み取れる目盛りの長さを100倍すると、標尺までの距離が得られる。望遠鏡の倍率が一定であれば、望遠鏡で見える物体の大きさと物体までの距離が反比例の関係にあることを利用している。

初代オートレベルは不具合で苦戦

 1950(昭和25)年、ドイツのツァイス社から「オートレベルN12」が発売される。ニコンは、チルチングレベルの好調により、オートレベル開発に後れをとった。しかし、先行する国内外の他社の特許に苦しめられながらも、1959(昭和34)年に「オートレベルN」を発売。この「N」は理想的な光学系と機械的な構造であった。しかし、反射ミラーをつりさげる合成繊維の耐久性に問題があり、不具合が発生した。急きょ改良を重ね、翌1960(昭和35)年に「オートレベルN改」を発売した。
 その後、1961(昭和36)年に発売した普及型の「レベルP型」をベースに、「オートレベルAP」を1966(昭和41)年に発売。さらに、「AP」の上位機種として、光学系などを改良した「オートレベルAE」を1970(昭和45)年に発売した。これが「AE」シリーズのルーツであり、現在の「オートレベルAE-7」につながる。


オートレベルN改


オートレベルAE

「偉大な親」を持つ苦労



井村元彦
1990(平成2)年、ニコン入社。入社以来、一貫して測量機の開発と設計にたずさわる。現在は、ニコン・トリンブル(ニコンと米国Trimble Navigation Limitedの合弁企業) 技術本部技術課品証設計グループに在籍。


 「AE-7」は、1980(昭和55)年に発売された「オートレベルAE-5」をベースに、ユーザーの声などをふまえて改良された製品である。
 改良ポイントの一つが、窒素ガスの封入やオーリングによる防水性の向上である。水深1メートルに30分間沈めても浸水しないJIS保護等級7を獲得している。また、最短合焦距離を従来の半分の20センチメートルに縮め、室内などの狭い現場でも測量できるようになった。
 また、円形気泡管の上に反射鏡(ペンタミラー)を設置して、接眼レンズをのぞく姿勢のまま、円形気泡管で水平の確認ができるよう配慮した。さらに、望遠鏡の視野内に標尺を入れやすくする光学式照準器(ファインダー)を採用した。このように現場での使いやすさをこれまで以上に重視している。
 入社2年目にして「AE-7」の開発と設計を担当した井村は、当時の苦労をこう語る。
 「『AE-5』は非常に完成度が高く、『偉大な親を持つと子どもは苦労する』ことを実感しました。例えば、『AE-5』は、三脚に取り付けた状態で倒しても壊れないほどの堅牢性があります。しかし、新設計となった『AE-7』で、同等の堅牢性を達成するのはむずかしいことでした。性能に影響しないと思われる部分を変更すると、堅牢性が低下することがありました。何度も改良されてきた機器ですから、完成度の高さを実感するとともに、部分だけを見て改良しようとすると、全体のバランスは崩れてしまうことを学んだのです」


気泡管と気泡管反射鏡(ペンタミラー)


光学式照準器(ファインダー)


オートレベルAE、AE-3、AE-5

「30分長く仕事ができる」優れた光学系


 ニコンの測量機は、望遠鏡の性能に定評がある。「AE-7」では望遠鏡の光学系を改良し、さらに鮮明な視野が得られる。
 「夕方薄暗くなり、標尺の目盛りが読みにくくなったとき、望遠鏡の性能の差が良くわかるのです。現在でも、夕暮れ時、従来の機種よりも30分長く仕事ができるほどと、高い評価をいただいています」

基本に忠実、そして、丈夫であること


オートレベルAS-2C

 井村は「AE-7」のロングセラーの理由をこう語る。
 「基本に忠実で、そして、丈夫であることが最大の理由であると私は思います。オートレベルは土木、建築から室内での工作機械の設置まで、幅広く用いられる機器です。ユーザーの手になじんだ操作性を変えることなく、地道な性能向上を目指した結果が、現在まで続く安定需要につながっていると考えています」
 現在、ニコンのオートレベルのラインアップは、高精度の「AS」シリーズなど7機種を数える。そして、建築、土木、測量の基礎を支える機器として、多くの現場で活用されている。



詳細記事↓↓↓
http://www.nikon.co.jp/channel/recollections/27/index.htm